これまで、実話をもとにエッセイっぽく書いてきましたが、今回は、初めてのフィクションを書いてみようと思います。
といっても内容のない、「こんなおっさんおったらうっとしいやろなぁ」といった話を書こうと思います(笑)
架空のうっとしいおっさんを、リアルなおっさんが書きますが、お付き合いいただけますと嬉しいです。
contents
おっさん紹介
自分のことを超カッコイイと思っている、とてつもなく痛い男がいる。名前は、「池手名 伊三(いけてな いぞう)」
このうえなく、いけてない男である。齢40にして独身。職業は、しがないSE(システム・エンジニア)。身長、体重は日本の平均172cm、70kg。顔もいたって普通。(自分ではイケメンと思っている)
その他詳細は物語の中でおいおい紹介していく。それでは、彼のお話を始めようと思う。
行きつけのバーにて
「いらっしゃい、あ、いぞうくん」
バーカウンターの中で迎えてくれた彼女の名はゆうこ。いぞう、行きつけのバーのオーナーである。年齢は30代後半だが、実際の年齢よりかなり若く見える、スラっとした美人。
「昨日、池田くんと黒田くんきてたよ。いぞうくんが作ったソフトの動きがおかしいって文句いってた。」
池田と黒田というのはいぞうの会社の同僚である。
「僕のプログラムがおかしい?まあ完璧な僕でも、たまにはミスくらいするさ」
そう言い、タバコに火をつけるいぞう。
「ゴホッッ」
「フィルターに火つけてるよ。なんかね、いぞうくんのソフトの終了ボタン押したら、Windowsが終了するって。Windows終了させてんじゃねーよ!!って怒ってたよ。」
「あいつらには、余裕がない。僕の遊び心であいつらのストレスを緩和してやってるんだよ」
「逆にストレス溜まっていくよ。絶対に。何にする?」
「ターキーをロックで。いや、やっぱりC.Cにしよう。今日はスコッチの気分だ」
「何か腹たつから、最初からC.Cって言ってくれる」
そう言ってゆうこがグラスに氷を入れ出した時、一組の若い男女が店に入ってきた。
深刻な悩み
このお店はカウンターの他に少しだけテーブルがある。ゆうこが男女をテーブルに案内する。ビールをオーダーする男女。しかし、その表情は浮かなかった。
「ねえどうしよう。ミカ。大変なことになっちゃった。だから、あんなにダメだって言ったのに!!ミカ死にたいって。ねぇ、本当に死んじゃったらどうしよう。」
女の方が今にも泣きだしそうな表情で男に言う。
「とりあえず落ち着いて。今は俺らでミカのこと元気つけないと。大丈夫。そんなに弱い子じゃないよ。」
男が女を元気づけようとする。どうやらただ事ではないらしい。
「でも、不倫相手の子を妊娠しちゃって、妊娠がわかった途端、相手の男はミカのこと捨てようとしてるんだよ。可哀想すぎるよ。心配。。。」
「何があっても俺らはミカの味方だ。」
「わかってる。でも、LINEが「私、いくね。」で終わってる。早く返信したいけど、でも、なんて言えばいいの。。。」
立ち上がるいぞう
「ほっとけ・・・ないな。」
ぽつりとつぶやくいぞう。
「いぞうくん!絶対に首突っ込んだらダメだよ。いぞうくんが首突っ込んだら、ろくなことにならないんだから。これまでもバッドエンドしかないでしょ?」
「ゆうこちゃん。それは違う。確かに君から見ればバッドエンドだったかもしれない。でも、本人達はハッピーだったかもしれない。物事を一方からしか見ずに判断してしまうことは、とても危険なことだ。」
「何か、すごく腹たつんですけど。。。とにかく首突っ込んだら・・・ちょっ、いぞうくん!!」
ゆうこの忠告を無視して、立ち上がるいぞう。そして、まっすぐと男女の元へ向かった。
判断を間違えてしまう男女
「すまない。聞くつもりはなかったんだが、聞こえてしまった。ほっとけなくてね。力にならせてくれないかな?」
男に話しかけるいぞう。
「おじさん。誰なんすか?」
「この店の常連客だ。ただの酒好きだが、これまでいろんな経験をしてきた。話の内容から、力になれるんじゃないかと思ってね。」
(大した経験してなくて、独身で彼女もいないくせに何言ってんだよ。あー心配。。。)
ゆうこの心配をよそに、男女はいぞうに頼ろうとしていた。
「本当ですか??私たち、どうして良いかわからなくて。。。」
「彼女、すべて信じれなくなった。死にたい。って言ってるんです。僕たちも、思いつく限りの言葉で元気づけようとしたんですが、ダメで。。。」
「こういうのはね、言葉じゃないんだよ。大切なのは気持ちなんだ。心の底から心配してる君たちの気持ちが伝われば、彼女は前を向けるはずだ。」
「でも。どうやって。。。」
不安げな女にいぞうが言う。
「じゃあ、君たちの気持ちに、おじさんの気持ちものせていいかな?ダメ男に都合いいように遊ばれた純粋な女の子が、不幸になっていいわけがないんだよ。」
「おじさん。。。(涙)」
「お願いします!!ミカを助けてください!!返信してあげてください!!」
そう言って女の方がいぞうにスマートフォンを渡す。三人のグループLINEは、ミカという子からの二人へ向けた送信で終わっていた。
二人が友達で良かった。今まで本当に楽しかったね。今までありがとうね。ごめん、私、やっぱりダメだ。。。私、いくね。
少し考えるいぞう。そして、LINEを送信した。
炸裂するいぞうLINE
「返信したよ。」
いぞうが返信し、二人に告げる。
「早くないですか??」
男が聞く。
「さっきも言ったけど、こういうのは言葉じゃない。気持ちなんだよ。」
「ありがとうございます!でも、何て言って元気づけてあげたんですか?」
そう言い、返信内容を確認しようとする女。その時、スマートフォンが鳴った。
「ミカから電話だ!あ。もしもし。ミカ!本当に心配してたんだよ。今のLINEね、え?何。。。?ちょっと待ってよ!!本当に心配してたんだよ!!え??死んでほしいわけなんてない!!何でよ!!ちょっと。待って!待ってよ!!ミ・・・」
電話が切れる。
「どうした?今、おかしくなかったか?」
心配そうに男が聞く。
「わからない。私のこと面白がってとか、死んでほしかったんだとか。そんな風に言われた。おじさん!どんなLINE送ったんですか!!」
「おじさんがおかしなLINE送るわけないだろ!」
「でも。。。おじさん、どんなLINE送ったの??」
目を閉じて考え込むいぞう。
「わからないよ。なんでミカあんなふうに。。。え?ちょっ?え?」
「どうした?LINE、どんな内容の・・・?」
LINEを確認する男女・・・
「ちょっと!!!何よこれ!!!」
「これ、ねーわ。」
「おいおっさん!僕の思いものせて。とかさっき言ってたよね。どんな思いのっけたんだよ!!」
「てか、どういう思考回路でこのスタンプに行き着くんだよ!おい!何とか言えよおっさん!!」
「私いくね。のあとにこのスタンプだと、行ってこい!って言ってるようなもんじゃねーかよ!!あー。私さっきこのおっさんにありがとう!とか言っちゃたよ。さっきのありがとう返せよ!!」
「もうこんなおっさんほっとけ!ミカのとこ行くぞ!!おいおっさん!!俺らの飲み代お前が払っとけよ!!」
そして、慌ただしく男女は出て行った。
静かなバーで
「あのさ、やっぱりバッドエンドにしか見えないんですけど」
ゆうこが男女のいたテーブルを片づけながら言う。
「さっきも言ったが、物事を一方からしか見ずに判断してしまうことは、とても危険なことだよ。」
そう言ってタバコに火をつけるいぞう。。。
ボワッッ!
「だから逆だ!逆!!さっきから葉っぱくわえてフィルタに火ぃつけてんじゃねーよ!!」
彼の名は、「池手名 伊三(いけてな いぞう)」
このうえなく、いけてない男である。
おわりに
こんなおっさんおったらほんまにうっとしいやろなぁと思って書いてみました(笑)
また、ちょくちょくこういうの書いていこうかなとか思ってます。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。