ブログ小説【ミュージシャンの悲劇】

またまた、短めのホラーを書いてみました。

ミュージシャンの悲劇

地元で活動していたバンドのメジャーデビューが決まった俺は、晴れて上京。なかなか人気の出なかったバンドだが自分たちの音楽を信じて活動を続けた結果、とあるオーディションで演奏した曲をレコード会社が気に入ってくれた。

「この曲でデビューさせてやる」

という担当者の言葉を信じてついていった結果、本当にメジャーデビューできた。

「これから、俺たちの音楽で世界をかえてやる」

俺は、前途洋々の未来に心を躍らせていた。これから始まる東京での生活、そしてプロミュージシャンとしての生活。その記念に俺は、ギターを新調することにした。

家から比較的近いところに古びた楽器屋を見つけていたので、その店に足を運んだ。
そのお店はおじさん一人でやっている楽器屋だった。

「すみません、ビンテージモデルのギターってどこでしょうか?」

おれはおじさんに聞いた。

「ビンテージだったら二階においてるよ。試奏もできるから気に入ったギターがあったら言ってくださいね」

俺は二階に上がり、ビンテージコーナーで古いギターを探した。ギタリストである俺は、ギターを何本も持っている。しかし、いわゆる使い古された昔のモデルであるビンテージモデルのギターは数本しか所持していなかった。名機とされるギターが、こういった古びた店に眠っていることが、たまにある。そういうギターの価格は新しいギターの数倍することも珍しくないのだが、記念に新調するのだ。少々高くてもよいものを購入しようと決めていた。
しかし、ビンテージコーナーを一通り見たが、心を奪われるギターはなかった。どれも良いギターだとは思うのだが、どこにでもありそうものだ。

「そんな簡単に名機が見つかるわけないか」

あきらめて階段を下り、店を出ようとした。

(ジャーン)

ギターを奏でる音が聞こえる。良い音だ。
ギターの音が聞こえてきた方に目を向けると、店のおじさんがギターを弾いていた。

「とても良い音ですね」

おじさんはにっこり笑った。

「わかるかい?最近の若いミュージシャンはこういう音の良さがわからないんだよ」

俺はギターを見た。かなり古いギターだったが手入れがされているのだろう。美しかった。
しかし、それは今までに見たことのないギターだった。

(それって、どこのギターですか?)

今あるギターブランドは海外、国内ともにすべて把握しているつもりだったが、知らないギターがまだあったのかもしれない。

「これ、実は私もよく知らないんだよ。この店に代々伝わるギターでね。かなり昔のギターらしいんだけどね」

昔のギターが今も美しい姿をして、美しい音を出すことに俺は感動した。

「あなたもギター弾くのかい?」

「はい。実はバンドのデビューが決まりまして、プロミュージシャンなんです。まだまだこれからですが」

「プロミュージシャン?」

おじさんの顔つきが変わった。

「はい。来月、デビュー曲がリリースになります」

「このギター、持って帰って弾いてみるかい?」

おじさんが唐突にそう言ってきた。

「え?」

「気に入ったら、そのまま使ってもらって大丈夫だから」

どういうことだ?
今日初めて会った人間にギターを持って帰らせる?
おれがギターを持ち逃げするとか、この人は考えないのだろうか。

「しかし、いいんですか?買ってもいないのに持って帰って」

「いいんだよ。どうせこのギターに値段はつけられないんだ。私はね、あなたがそのギターを弾き続けてくれることを願ってるんですよ」

言っている意味がよくわからなかったが、要は素晴らしいビンテージギターをタダでくれるということだ。ここは、お言葉に甘えておこう。

「わかりました。では、お言葉に甘えてもって帰らせてもらいます」

俺はおじさんからギターを受け取った。そのとき、おじさんはなぜか少しさみしそうな顔をした。

「うまく弾いてやってね」

俺はプロのギタリストなんだ。うまく弾いてやるとも。

「はい。まかせてください」

自身満々にそう言ったあと、おじさんにお礼を言って楽器屋を後にした。

(ジャーン)

家に帰りアンプにつないでギターを弾いてみる。やはり良い音だ。このギターなら俺たちのバンドの曲にも合いそうだ。おれは次の練習でこのギターをメンバーに披露することにした。
そうと決まれば練習あるのみだ。おれは夢中でギターを弾いた。
練習しているうちに、すっかり夜になっていた。
近所迷惑になるので、おれはアンプにヘッドフォンをつないで練習することにした。
ヘッドフォンをつなぐとさらに音が鮮明になった。
「いい音だなぁ」
おれはその音に酔いしれ、ギターを弾き続けた。

(ジャーン、ザザッジャーン、ザザッ)

調子よく弾いていたのだが、さきほどからギターの音にノイズが混じりはじめた。
アンプの調子が悪くなったのかもしれない。俺はヘッドフォンを外してアンプを確認しようとしたが、ヘッドフォンが両耳に張り付き、動かない。どんなに力を入れても外れなかった

「どうなってんだよ・・・」

(ギャイーン)

ヘッドフォンから爆音で雑音が聞こえてきたので、俺は頭を抱えて倒れこんでしまった。

「へーたーくーそー」

なんだって?へたくそ?
低い男の声でヘッドフォンからは確かにそう聞こえてきた。
しかし、部屋には誰もいなかった。

「誰だよ!」

大きな声を出したが、反応がない。声の主は気になったが、まずはヘッドフォンを外さなければいけない。俺はもう一度ヘッドフォンを外そうとした。しかし、やはりいくら手に力をこめてもびくともしなかった。

「このへたくそー!」

再び声が聞こえた。怒鳴るような男の声で、さきほどより大きかった。
その声が頭に響き、ひどい頭痛がした。

「だれなんだよ!」

頭を抱えながらもう一度そう叫んだが、返事はない。

(ピキーン)

ヘッドフォンからギターの弦が切れる音が聞こえた。見ると一番細い1弦が切れていた。
そして、切れた1弦が生き物のように、左手の小指にまきついてきた。

「え?なんだよこれ?なんでギターの弦が・・・」

(バシャッ)

小指に激しい痛みが走った瞬間、自分の小指が飛んでいた。

「うわー!!」

痛みと驚きで、おれはその場にのたうちまわった。

(ピキーン、ピキーン、ピキーン、ピキーン)

ギターの2弦から5弦が切れる。さきほどと同じように、その4本の弦は生き物のように薬指、中指、人差し指、親指にまきついてきた。

「やめてくれ・・・」

(バシャッバシャッ)

「ぐわー!!!!」

薬指、中指、人差し指、親指が飛んでいった。

「もう、やめてくれ・・・」

(ピキーン)

残った6弦が切れた。そして、その弦は首に巻き付いてきた。

「やめ・・・やめ・・・やめ・・・て・・・」

とっさに左手で弦をつかもうとした。しかし、その手に指はもうなかった。

「おねがいします・・・」

弦がゆっくりと首をしめていく。
意識が遠のき、最後は痛みを感じなくなっていた。

「帰ってきたのかい?」

楽器屋のおじさんはギターに問いかけていた。

「あの青年はダメだったんだね。今回は期待したんだけどね」

おじさんは血に染まったギターに弦を張りながら言った。

「お前は、凄いギタリストだったんだろ。でも、曲が受けずにデビューできなかった。そして、自分より下手なギタリストがどんどんデビューしていくのが許せずに、死後、そのギターに宿った。それから、デビューしていくミュージシャンを品定めしては、殺していった。先代から聞いてるよ。そして、お前が成仏できる唯一の方法が、お前が納得するギタリストに出会えることも聞いてる。やはくお前が納得するギタリストが現れるといいねぇ」

(ジャーン)

おじさんは弦を張り終え、ギターを奏でた。
美しい音と一緒に、真っ赤な血が舞った。

おわりに

また、ホラー小説を書いてみました。面白い、面白くないは別にして、思いつくたびに書いてみたいと思います笑

最後まで読んでくださりありがとうございました。

スポンサーリンク
関連コンテンツ

関連コンテンツ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする