ブログ小説 短編

ブログ小説【かわいそうなストーカー】

短めのホラーを書いてみました。

かわいそうなストーカー

「よし、今日はあの女にしよう」

俺は今日のターゲットを20代前半であろう若くてスタイルの良い女に定め、駅の改札を出て後をつけ始めた。土地勘のない駅だったが、良い女が降りたのならばついて行くのみだ。

俺には少しおかしな趣味がある。それは好みの女を見つけては、その女の後をつけること。ストーキングと言われればそれまでなのだが、世間一般に言われるストーカーと自分は違うと信じていた。世間一般に言われるストーカーというのは、おそらく1人の女に対して一方的な感情を抱き、執拗につきまとう奴をいうのだ。

それに対して俺は、つける女に感情などない。なにせ、その日目をつけただけの女なのだ。そして、1人に固執する気もない。1人のターゲットの後をつけ終わったら、次はまた違う女だ電車やバス、街を歩いているときなど、いかなる時でも俺はターゲットを探している。

では、その女を尾行して何をするかというと、特に何もしない。綺麗な女の後をつけるというだけでスリリングなのだ。女が尾行の気配を感じてくれて慌ててくれたりすると、最高だ。

一応、その女の家まで尾行できればゴールと定めているのだが、これまではほぼ家まで尾行できている。こんなことをいつまでも続けるつもりはないが、こんなバカをできるのも学生のうちだけだ。大学を卒業して社会人になったらやめるつもりだが、学生のうちはこのストーキングであらゆる女を尾行してやろうと思う。

駅から離れ、人気がなくなりさみしい通りを歩く女。
時刻は夜の10時になっていた。こういったさみしい通りの光は所々にある街灯だけなので、辺りは暗かった。こういった道の尾行は難しい。人気がなく隠れる場所もないので、ある程度距離を取るしかない。しかし、距離を取りすぎると見失ってしまう。見失わず、気づかれない程度の距離感が難しいのだ。

女が路地を曲がる。少し間をおいて、同じ方へ曲がると公園があり、女はその公園に入っていった。
俺も公園に入った。女の姿が前方に見える。俺は見失なわないように後をつけた。少し距離はあるがはっきりと女が見えていた。しかし、ふと、女が視界から消えた。

少し大きめの公園、その中にある道を女は歩いていた。道の両サイドには木があったが、隠れたというわけではない。ふっと、消えたのだ。これまでの尾行でターゲットを見失うことはあった。しかし、それはこちらのミスや相手に気づかれて巻かれたときなどだ。

今回、俺に落ち度はなかった。というより、目の前の女が突然消えるなど、今までの経験になかった。
俺は走って女の消えたあたりまでやってきた。

やはり、この辺りに隠れるところなどない。まだ道は続いているし、木の方に隠れようと思ったらそちらへ移動しなければいけない。しかし、女にそんな動きはなかった。

「おかしいなぁ」

独り言を呟きながらあたりを見渡した。

(ガサガサ)

木が揺れる音がした。
しかし、風など吹いていない。
いるのか。そこに。
俺はおそるおそる木に近づいた。

(ガサガサ)

また、木が揺れて葉っぱのなる音がした。
しかし、やはり風は吹いていない。そして、葉っぱも揺れていない。
俺は怖くなってきていた。この音、一体どこから。

(ザッザッザッ)

こっちに向かって何かが近づいてきている。
背後から何かが近づいてくる音がしたので、俺はふりかえった。

しかし、そこには誰もおらず音もピタッとやんでいた。
「誰か、そこにいますか?」
声をかけてみたが反応がない。
俺はもう一度木の方に目をやった。

(ザッザッザッ)

その瞬間、また何かが近づいてくる足音が聞こえた。こちらへ近づいてくる。先ほどよりもどんどん大きな音になってきて、その音は背後で止まった。

確実に誰かがいる。しかも、真後ろにだ。俺は振り向くのが怖くなり、固まってしまった。

(ドン!)

「うわっ」

目の前に何かが落ちてきて、こちらへ転がってきた。

「なんだ?」

おそるおそるそれを覗き込んでみると、なんと人間の頭部だった。

「うわー!」

俺はその場にひっくり返ってしまった。腰が抜けたようでうまく身動きが取れなくなっていたが、目はしっかりとその頭部をとらえていた。

「人殺し・・・」

その頭部は俺に向かってそう言ってきた。
心臓が跳ね上がった。

「あ・・・え・・・」

うまく言葉にできない。
しかし、今、確かに人殺しと聞こえた。
なんだよ人殺しって。

「人殺しー!」

今度ははっきりと、大きな声で頭部はそう叫んだ。

「うわー!」

俺は全力で頭部から離れようとしたが、体がうまく動かない。死にかけのゴキブリのように、手足をバタバタさせるのがやっとだった。

「あなたも私のことつけて殺す気だったんでしょ!」

頭部がそう叫んだ。
必死で後ずさり、俺はやっとの思いで体を反転させることができた。

(ドン・・・)

這ったまま前に進もうとすると、何かにぶつかった。

顔を上げてみると、目の前に女がいた。
多分、俺が尾行していた女だと思う。
着ている服が一緒だったのだ。

しかし、服はビリビリに切り裂かれ、肌が露わになり、血にまみれていた。
そして俺が尾行していた女かどうか確証が持てなかったのは、顔を確認できなかったからだ。

つまり、首から上がなかったのだ。俺は気を失ってその場に倒れこんだ。気を失う前に、先ほどの頭部が尾行している女の顔だったことを思い出していた。

 

「大丈夫?大丈夫ですか?」

気づけばそう声をかけられ、体をゆすられていた。

「うわー!」

俺は気を取り戻すなり、悲鳴をあげてしまった。しかし、目の前にいるのは親切そうなおじさんだった。

「あなたが倒れていたので心配になったんです」

どうやら、親切な通行人が俺を起こしてくれたらしい。

「そうだったんですか。それはすみませんでした」

「なぜ、こんなところで倒れられていたんですか」

「いや、信じてもらえないかもしれないのですが・・・」

俺は尾行していたことは伏せて、恐ろしい女のことだけを伝えた。

「とても信じられませんよね。こんな話」

「いや、そうでもないですよ」

おじさんは考え込むような仕草を見せた。

「実は先月、この街に住む美しい女性が無残に殺害されましてね。強姦されたあと、首から上を切り取られましてね。犯人はまだ捕まっていないのですが、その女性の頭部もまだ発見されてないんですよ」

「そんな事件があったんですか」

「ええ。そしてその事件以来、殺害された女性の霊がこの公園付近に出るような噂はあるんです」

「では、その事件の現場はこの公園だったのですね」

「いや、そうではないんです。ここは殺害現場ではない。しかし、女性の首はその木の下に埋まってるんですよ」

「え?どういう・・・」

そこで言葉が切れた、おじさんの手にナイフが握られていたからだ。

「私がね、その犯人なんですよ。綺麗な子だったんでね。首を持ち帰ったんですよ。でもね、3日もすれば飽きてしまって。美人も3日で飽きるっていうけど、あれ本当ですね。飽きていらなくなったから、その木の下に埋めたんです」

おじさんの言っていることがよく理解できなかったが、嘘ではないことは伝わってきた。

「でも、この公園に幽霊が出るって噂広まってるんですよね。だったら、オカルト好きな人とかが調べるんじゃないでしょうか」

何を冷静に言ってるんだと自分で自分に驚いた。

「ああ、あの噂ね。実は僕しか知らないんですよ。あの幽霊を見た人はね、あなたのように気を失ってこの場に倒れてるんですよ。それを僕が起こしてあげるんです」

血の気が引いていく。

「そしてね、僕が殺してあげるんですよ。だから、この噂は僕で止まっているんです」

おじさんはそう言うと、にっこり笑ってナイフを振り上げた。

そしてそのナイフは、俺に向かってまっすぐに落ちてきた・・・

おわりに

ここ最近、少しだけホラーシナリオを描くお仕事をさせてもらっているので、ホラー小説を書いてみました。また何か思いついたら書いてみたいと思います。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

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