ブログ小説【神様の条件】

今回は短編の応募用に、読み切りの短編小説【神様の条件】を書いてみましたので紹介します。


神様の条件

「やったぞ!昇級だ!」

「私もー!」

「おめでとうございます!蒼竜そうりゅうさん!天乃あまのさん!」

年に1度の神昇級試験結果発表の日。神界では毎年この日、合格した者の歓声であふれる。

神太かんた、おまえはどうだった?」

「蒼竜さん、僕は今年もダメでした。だって僕、神ポイント0ですもん」

「あのさ、神太。あんた昇級する気あるの?もう100年くらい今のクラスでしょ?」

「天乃さん、また来年頑張ります」

「あんたねぇ…」

会話をしているのは、神太。蒼竜。天乃。

蒼竜と天乃は神界恵比寿えびすエリアで出世コースをひた走る優秀な神様で、蒼竜は男神。天乃は女神だ。

そしてその二人を慕う神が神太。二人の後輩にあたる男神だ。

「神太…あのな…」

蒼竜が言いかけたとき、会場全体に声が響いた。

「みな、1年間よく頑張ってくれた」

声の主は恵比寿えびす。この恵比寿エリアのトップに君臨する神である。

「この1年、人間の願いを効率よく叶えた神は昇級しているはずじゃ。逆に昇級しなかった神は願いの叶え方に問題があるということじゃ。そして今日、不名誉な記録が生まれてしまった…」

少しの沈黙の後、恵比寿が続けた。

「神太!神太はおるか!」

「恵比寿さまー!ここでーす!」

笑顔で手を振る神太。

「ここでーす。じゃないバカたれ!神太、おぬし今回も昇級なしじゃな。何年今のクラスにおる?」

「う〜ん。数えてないからよくわからないです」

「100年じゃ阿呆!この神界で100年昇級しなかった神はおらん、おぬしが初めてじゃ、バカたれが!その不名誉な記録をこの恵比寿エリアから出してしまったのじゃ。神7セブンの他の連中に散々皮肉を言われたわ」

「すみません!がんばります!」

「聞き飽きたわ!阿呆が。とにかく次の1年で昇級できなかったら、神太。お前を消滅させる」

「消滅…?消滅ってなんですか?」

「文字通り消すんじゃよ。人間界で言うと死と同じじゃ」

沈黙が流れる。

「恵比寿さま!ひどいです!神太も一生懸命やってるのに」

「天乃。そう思うならお前が助けてやれ。神セブン会議での決定事項じゃ。よいか、神太。この神界での時間は人間界での時間と同じじゃ。人間界には1年で様々な行事がある。それ故願い事も多い。この1年で効率よく人間の願いを叶えて昇級しろ。わかったな!」

「はい!わかりました!」

神太は笑顔でそう言った。

「おい神太、お前よく笑っていられるな」

「蒼竜さん、僕はダメな神様なので消されてもしょうがないですよ…やっぱり、寂しいですけど…」

「神太、心配するな。私があんたを消滅させない」

「天乃さん…」

「そのためにまず確認なんだけど、あんた、ちゃんと昇級の仕組みわかってるよね?」

「はい、人間の願いを叶えて神ポイントを貯めるんです」

「まあそうなんだけどさ、神ポイントの貯め方わかってる?」

「はあ…なんとなく」

「もう!ほんとこの子は…」

「天乃、ちゃんと初めから説明してやれ」

「わかったわよ。いい神太。最初から説明するね」

「すみません…」

「まず、この神界にはA〜Eってランクがあって神様はそのランクに分類されるの。Aの上にSランクってのがあるけど、これは神セブンって呼ばれてる恵比寿さまクラスの神様ランクで、今は7しんの神様がいる。この神界はその7神が治めるエリアに分かれてて、私やあんたのいるここは恵比寿エリアね」

「はい、あ、質問いいですか?」

「何?」

「神界の神セブンって、人間界で言われてる七福神と関係あるんですか?」

「あると思うよ。神界で1万年以上も前に神様総選挙ってのがあって今の7神が選ばれたのね。その選挙以降この体制だから、人間界に長い年月かけて情報が漏れたんだろうね。だって、人間界の恵比寿さまって本物とそっくりでしょ?釣り竿も持ってるから、釣りが趣味ってのもバレてるし。他の6神に実際には会ったことないけど、名前も同じだし、きっと人間界で祭られてるのとそんな変わらないと思うよ」

「やっぱ、そうなんですね」

「うん。でもまあ、それはあんま重要じゃないからいいわ。で、重要なランクの上げ方ね」

「はい」

「あんたは1番下のEランクだから、次の昇級でDランクに上がらないといけない。ちなみに、私と蒼竜は今回昇級してAランクね」

「はい」

「Dランクに昇級するにはあんたの言う通り神ポイントが必要なんだけど、必要なのは10000ポイントなの」

「10000ポイントもですか?」

「あんたやっぱり知らないのね。そうなのよ。それだけ必要。でもね、これは別に難しいことじゃない」

「でも僕、ぜんぜん貯まらないですよ」

「あんたのやり方が悪いからよ。いい。人間が神社に願い事をすると、その願いがこの神界に届き、私達神がその願いを叶える手伝いをする。そのときの人間のお賽銭が、神ポイントになる。これは大丈夫?」

「はい」

「例えば、受験生が神社で100円を入れて合格祈願をする。この願いを神太が引き受けた時点で、神太には神ポイントが100ポイント入るの」

「はい、それから神の力で助けるんですよね?」

「そう。そこから神の力を使って人間の願いを叶える手伝いをするけど、神の力を使うと神ポイントを消費する。つまりこの場合、力として使える神ポイントは100ポイントだから、ポイントを貯めようと思うと、神の力を100使っちゃだめなの。いろんなことに使える神の力だけど、使い方によって消費ポイントは変化する。だから、できるだけ消費ポイントの低い神の力でこの子を合格させないとだめなの。わかる?」

「それはわかるんですけど、いつも残らないんですよ」

「じゃあ質問。あんた、この子をどうやって合格させる?」

「え〜と、この子の得意な分野を調べて、入試問題をこの子の得意分野で埋め尽くします」

「それがダメなのよ」

「どうしてですか?」

「明確に、『こういう力を使うとこれだけ神ポイントを消費します』と示されてる訳じゃないけど、人間に努力させないやり方は多くの神ポイントを消費するの。あくまで神様は手助けをするだけで、願いを叶えるのは人間の仕事なのね。多分、あんたの入試問題すりかえ、一発で100いくよ。それで人間が合格しても、あんたに神ポイントは残らない」

「じゃあ、どうすれば…」

「人間に努力させるのよ。例えば…そうだね、この子が勉強しない子なら、志望校や滑り止めの学校全部落ちた悪夢を見せて、勉強した日は悪夢勘弁してやるとか。こういう力の使い方だと、入試まで続けても消費は10ポイントとか、多分その程度だよ」

「それでも本人が努力しなかったら?」

「見捨てればいいんだよ。わかってると思うけど、人間の願いが叶わないと神ポイントはなくなる。だったら、願いを叶えられない人間は早く見限った方がいい。神太。選ぶ人間が重要なんだよ、あんたは弱い人間を選びすぎる」

「どういうことですか?」

「例えば、さっきの合格祈願の例ね。十分に学力があり、放っておいても合格する人間でも合格祈願には来るでしょ?」

「はい」

「その人間の願いを引き受けるの。そして何もしない。でもその子は合格するから、その人間の賽銭分まるまる神ポイントが貯まるでしょ?」

「そうですけど…」

「まあ今のは極端な例だけど、あんたは助けすぎなのよ。とにかくこれからは、私がつくから、私の言う通りにしなさい」

「はい、わかりました」

そして天乃は1年間、神太と行動を共にすることにした。

〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 

恵比寿の宣言から既に10カ月が経った。

昇級試験まで残り2ヶ月だが、天乃の協力のおかげで神太は着実に神ポイントを貯めており、十分に昇級可能なペースだった。

「神太、今日は?」

「今日は女子高生です。『好きなクラスメイトと付き合えますように』っていう願い。500円もお賽銭ありましたよ」

「それ、絶対ものするよ!」

「はい!」

神太と天乃が人間界に降りていく。

神は人間界を自由に動き回れる。飛ぶことも、海に潜ることもできる。そしてその姿は人間には見えない。ただし、神は人間界の物には触れることができない。それは人であっても、物であってもだ。だから、神は人間界で人間の様子を観察することしかできないのである。

「天乃さん!見えました。あの女の子です。教室を出て今から帰るところかな」

「よし!神太、どうする?」

少し考える神太…

「男の子も彼女に好意を持っているので放っておいてもうまく行くと思いますが、少しだけ助けましょう。二人は電車通勤でしたね。少しだけ力を使って二人を同じ車両に乗せます。あとは二人がうまくやるでしょう」

「神太、それでいいよ」

「はい!」

神太は神の力を使い、二人の帰るタイミングを合わせ同じ車両にした。二人の会話は弾み、寄り道して帰ることになったようだった。

「天乃さん、戻りましょうか」

「そうだな。もうあの二人は時間の問題だし」

二人が空へ飛びあがろうとしたとき、子供の泣き声が聞こえてきた。

「いたいよー。おかあさーん。え〜ん」

「あら、ころんじゃったのー。痛いねー」

小さな子供が転んだらしく、膝を少し擦りむいていた。それを見た神太が地上へ戻る。

「おい!神太!」

天乃が神太を呼ぶが、神太は止まらない。

「痛いの痛いの、とんでけー」

そう言いながら子供の膝をさする母親。その横に神太が立ち手を子供の膝へかざす。すると。

「あれ?おかあさん、痛くない!痛いのとんでいった!」

「ほんとに?よかったねー。よかったよかった。じゃあ帰ろうか」

「うん!」

スタスタと歩く母子を見ながら微笑む神太に天乃が話かけた。

「あんたね、そんなところでせっかく貯めた神ポイント使ってどうすんのよ?」

「すみません。でも、ほっとけないんです。ああいうの」

「ほんとにあんたって子は、これっきりにしなさいよ。はい!帰るよ!」

「はい、帰りましょう」

〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 

昇級試験の前日になった。

神の力に対する消費ポイントは恵比寿にしかわからないが、神太が貯めた神ポイントは優に10000ポイントを越えていると、天乃と神太は信じていた。

「あんた、よく頑張ったよ」

「ありがとうございます。天乃さんのおかげです」

「あんた、もう今日はゆっくりしときなよ」

「はい天乃さん、でも、今日のお願い見てきます。日課になってるから行かないと気持ち悪いです」

「しょうがない子だねー。見たらすぐ戻ってくるんだよ」

「はい」

神界の掲示板で人間の願いを確認する神太。この掲示板に人間の願いが張り出されるのだ。

(そんなに急ぎのお願いはないな)

お願いを確認し戻ろうとした時ふと人間界を見ると、今まさに願い事をしている子供の姿が見えた。小学生くらいだろうか。神太は耳を傾けた。

「神様、お願いです。兄ちゃんを…兄ちゃんを助けてください。海に落ちて、波にさらわれました。海が荒れてて船も出せません。大人もどうすることもできません。お願い…助けて。兄ちゃんは僕をかばって、僕が…海が見たいって言ったから、僕のせいで…兄ちゃんを…助けてください」

聞き終えた瞬間、神太の体は人間界に降りていた。

〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 

「あれ、天乃。神太は一緒じゃないのか」

蒼竜が天乃のところへやってきた。

「いよいよ明日だろ、大丈夫だとは思うんだけど心配でさ、様子見に来たんだよ」

「いや、さっきまで一緒だったんだけど、掲示板から帰ってこないんだよ」

「何してんだあいつ、おれ、ちょっと見てくるわ」

「暇だし、私も一緒にいくよ」

掲示板に着いた天乃と蒼竜だが、神太の姿が見当たらない。

「あいつどこいったんだ、天乃…?」

天乃が目を見開いて、一つの願いを指差していた。

「蒼竜、これ…」

天乃の指の先には一つの案件と担当が示されていた。この掲示板では願いと担当がわかるようになっている

『願い:海難事故に遭った小学生の救出
 担当:神太』

「海からの救出だと…無茶だ、あいつ…」

「あの、バカがー!」

人間界へ降りようとした天乃だったが、凄い力で引きもどされた。

「天乃、行ってはならん」

天乃の前に立っていたのは恵比寿だった。

「恵比寿さま」

「ならんぞ」

「どうしてですか!あいつ、この1年必死に頑張ってきたんです。明日は昇級できるはずです。でも、あいつバカだから、今回の願いにこれまで貯めた神ポイント全部使ってしまう。そうなったら明日、あいつ恵比寿さまに消されるじゃないですか!」

「そうなったなら仕方がない、それが神太の選んだ道ということじゃ」

「いやだ!神太を助けにいく!」

「ならん!」

「なんでよ!」

「天乃、神と言えども全ての人間の願いを叶えてやれる訳ではない。助けてあげたいと思っても、どうしようもないことがある。それを、身をもってわからせるんじゃ」

「あいつバカだからあきらめませんよ!恵比寿さま!」

「ならん!」

「わからずや!恵比寿さまなんて大っきらい!」

天乃はその場に泣き崩れた。

〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 

(ダメだ…これじゃ探せない)

海面を飛びながら、神太は荒れた海で苦戦していた。

(まず天気だ、晴れさせないと)

神太は空に手をかざし、力を込めた。強かった雨と風がやみ、晴れ間が出てきた。

(いっぱいポイントためたから、まだまだ使えるはずだ)

穏やかになった海を見下ろし、海面に手をかざす神太。

(…いた。あそこだ。体温を感じる。まだ、生きてる!)

急いで感じた体温の方へ飛ぶと、まさに子供が海に沈んでいくところだった。まだ小さい。小学生に見えた。

(この体でよく頑張ったね、今、助けてあげるからね)

水中へもぐり、少年のすぐ下に神の力で神太はいかだを作った。いかだは少年を乗せ、一気に水面まで上がった。あらためて少年をみると怪我をしており、全身のいたるところから血が出ていた。

(治してあげないと)

少年に手をかざし力を込める神太。しかし…

(ダメだ…傷が治らない)

これまでの活動で神太は神ポイントを使い果たしており、もう少年の傷を治すことができなくなっていた。

(くそ、まだ生きてるのに、なんとか血を止めないと)

神太がそう思ったとき、大きな背びれが水面に見えた。

(何…?まさか…)

水中へ沈み様子を見る。

(嘘だろ…やめてくれ)

大きなサメがいかだの周りをぐるぐると回遊していた。

(血だ…血の匂いでサメが来たんだ。くそ)

サメを撃退しようと試みる神太だが、神ポイントがないのでどうすることもできない。

サメはいかだから距離を取ってぐるぐると回遊していたが、徐々にいかだとの距離を詰めていく。

そしてサメの描く円が小さくなっていった。

(やめろ!)

神太がサメに体当たりを試みるがすり抜ける。神界のものが人間界のものに触れることはできないのだ。

(僕に力があれば、もっと力のある神様ならこの子を助けてあげられるのに)

サメはあざ笑うかのように神太の体をすりぬけていく。

(僕じゃ…無理だ。助けてあげられない、だれか…)

サメがいかだに体当たりをした。少年の体が水中へ沈んでいく。そしてその体にサメがかみつこうと勢いをつけて少年に向かっていく。

「だれかー!天乃さん!蒼竜さん!」

神太が叫ぶが、助けはこない。

(ごめんなさい。助けてあげれなくて、ごめんなさい)

サメが少年に噛みつこうと大きく口を開けた。

(やっぱり嫌だ!だれか、だれか助けて!)

「助けて!!かみさまー!!」

神太がそう叫んだときだった。

大きく口を開けたサメが、そのままの体制で海から引き揚げられた。凄い勢いだ。

神太がすぐに水面へ上がり確認すると、サメの口に大きな釣り針がかかっており、釣り糸は空から垂れていた。

そして次の瞬間、サメは凄い勢いで引き上げれらそのまま空へ消えていった。

(何…?)

放心状態で空を見つめる神太だったが、見覚えのある顔が雲の隙間から出てきて我に返った。

「え…えびすさま!」

「こら神太!おぬし神が神頼みとは何を考えとるんじゃ。この阿呆が」

「すみません…」

「その人間、砂浜へ打ち上げておいた。早く行って様子を見てこい」

「はい、ありがとうございます!」

「こっちに戻ってきたらすぐにわしのところへ来るんじゃぞ。説教じゃ」

「はい!すみません!」

謝っているが、神太は笑顔になっていた。

「笑いながら謝るなバカたれ。早くいけ」

「はい!」

神太が砂浜へ行くと少年が打ち上げれており、人が集まってきていた。

「こっちだー、まだ息があるぞー」

「タオル持ってこい!早く救急車だ!」

(もう大丈夫だ、よかった)

そして、少年の横にお願いをしにきた弟の姿もあった。

「兄ちゃん、おにいちゃーん!ごめんなさい。ごめんなさい。うわーん」

弟の声に少年は反応して目を開け、口を動かした。聞こえなかったが、

「大丈夫だよ」

少年の口はそう動いたように見えた。

「うわーん。かみさまー、ありがとうー」

(僕1人じゃ無理だった。ごめんね、ダメな神様で。そして、これが僕の最後の…)

「かみさまありがとうございましたー」

(お兄ちゃんが助かってよかったね)

神太は兄弟を見て涙を流していた。

〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 

「恵比寿さま、神太です

「入れ」

神会へ戻った神太はすぐに恵比寿のところへ向かった。

「神太、今日のはなんじゃ

「すみません、でも、ほっておけなかったです」

「おぬし、今日何もせんだら、明日は昇級じゃったぞ。なぜ、そういうことを考えんのじゃ

「小さな弟が泣きながらお願いしてました」

「あの溺れた兄はの、普通は助からん。おぬしが無茶をしても、助からんかったんじゃ。おぬし、なぜ諦めん?」

「困っている人間や、弱い人間を助けるのが神様からだと思うからです。目の前に困っている人がいたら、放っておけません。それに…

「それに何じゃ?」

「お兄ちゃんは助かりました。恵比寿さまが助けてくださいました。恵比寿さま、ありがとうございました」

「神太、わしは明日お前を消すかもしれんのじゃぞ。そんなわしにありがとうなど言う必要はない」

「いえ、恵比寿さまには感謝しかありません。ダメな僕を100年も見てくれた。他の神様ならもうすでに僕なんて消されていたかもしれません。明日消されても、僕には感謝しかありません

神太はにっこりと笑った。

「笑うなバカ者。調子が狂うわ。もう行け」

「はい。失礼します。僕、優しい恵比寿さまのところで本当に良かったです。今日、お兄ちゃんを助けてくれた恵比寿さまを見て思いました。だから、ありがとうございました」

頭を下げて神太は出て行った。

「おい、そこでのぞき見しとるやつ、降りてこんか」

天井から、すっと天乃が降りてきた。

「ほんとに消す気ですか?神太のこと?」

「のぞき見とは感心せんな」

「恵比寿さまが天井を空けておくからです。でも、わざと聞かせているようにも思えました」

「ふん、今日は暑かったんじゃよ」

「そういうことにしておきます」

「天乃、おぬし、神太をどう思う?」

「素直で優しい子。この1年一緒にいましたけど、あの子ほんとは、もっと弱い人間を助けたかったと思います」

「そうじゃな。あいつの目には弱い人間しか映らん。弱い人間を助けることで頭がいっぱいなんじゃ」

「そうですね」

「だから、お前がついてなければあんなに神ポイントなんて貯まるわけがなかった。じゃがの…神太を見てるおると、あいつこそが良い神様じゃないかと思えてくるんじゃ」

「私もそんな気がしてます。この神界の仕組みではダメな神様ってことになりますけど」

「そうじゃな。ダメな神様じゃ。じゃがの、いかんかの?神界に1神くらい、ダメな神がいても良いんじゃないかの?いかんかの?天乃」

「恵比寿さま!ダメなわけ…ないじゃない!!」

「天乃、すまんがこれに神太のハンコをもらってきてくれんか」

恵比寿は一枚の紙を天乃に渡した。天乃が紙を確認する。

『借用書

借用ポイント  壱萬ポイント也
貸主 恵比寿

1.私は上記ポイントを貴殿より借り受けました。
2.返済については、無利子、無期限との旨、承知しております。

借主 神太』

「これ…」

「さっき神太に渡そうと思っとたんじゃが、泣いてしまいそうでの。そのポイントで神太を昇級させる。昇級させんとの、他の神セブンの連中が納得せんのじゃよ

「恵比寿さま…無利子、無期限ってあげてるのと一緒じゃないですか…

天乃の目から涙がこぼれた。

「恵比寿さま、これだけ聞かせて。初めからこうするつもりだったんですか?今回の昇級がダメでも、初めからこうするつもりだったんでしょう?」

「それは、そのじゃな…」

「恵比寿さま?」

「…」

「恵比寿さま!!」

「うるさいなおぬしは!あたり前じゃろう!あんな可愛いやつ、消せるわけないじゃろうが!!そんなこと言わせんでもわかるじゃろう阿呆!!

天乃の表情が泣き笑いでくしゃくしゃになる。そして、天乃は深々と恵比寿に頭を下げた。

「なんじゃ?おぬしに感謝される筋合いはないぞ」

「いえ、謝罪です。前に、大キライなんて言っちゃったから」

「ふん」

「恵比寿さま」

「なんじゃ」

「大好き…」

「はよいけ阿呆」

「はい!」

天乃はもう一度一礼した後、「かんたー!」と叫びながら走って行った。

〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 

「神太ー!」

「あ、蒼竜さーん!天乃さーん!」

神太を見つけた蒼竜と天乃が走ってきた

「神太、今日、俺の依頼に付き合わないか?Dランクに昇級したんだから次はCランクを目指さないとダメだろ?勉強させてやる。天乃も一緒だぞ

「今日ですか?僕も引き受けた依頼があるんですよ。だから、これから人間界行かないと」

「急ぎの依頼なの?」

天乃が神太に聞く。

「はい。小学生なんですけどね、『野球の試合でヒットが打てますように』って。その試合、もう始まるんですよ。その子、ずっと補欠だから手伝ってあげないと

「神太…、何回も言ってるけど、お前、引き受ける依頼をだな…」

「神太!早く行ってやれ」

蒼竜を遮り天乃が言った。

「はい、もう始まる!すみません蒼竜さん、天乃さん。行ってきます!

神太が人間界に降りていった。

「おい。天乃。お前、どうしたんだよ?神太の教育係じゃなかったのかよ

「いいの」

「は?」

「神太はあれでいいの

そう言って笑う天乃を蒼竜はポカンと見つめていた。

おわりに

応募用に短編小説を書きました。

小説投稿サイトで募集されている「神様」をテーマにした短編小説のコンテストに応募するために書いた小説ですが、もっとうまく描きたかった。まだまだ勉強しないとです。

今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。

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