小説シリーズ【デリートマン】⑭


今回のお話

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小説シリーズ【デリートマン】⑬
今回のお話 小説シリーズ【デリートマン】の続きを書いていこうと思います。前の話はこちら↓ デリートマンの友人④ 「あんたら飲みすぎ...

デリートマンの友人⑤

(どうもしっくりこない)

中元の話を聞いて数日経つが、田坂はまだ中元の話が腑に落ちないでいた。中元の話は以下のようなものだった。

不倫相手である金城麻里と出会ったのは、中元の会社が出典した展示会。中元はお店の改築を得意とするリフォーム会社へ勤めていたが、そこへ相談へ来たのが麻里だったらしい。

中元は社内SEとして社内システムを担当していたが、元々営業部だったこともあり、人出不足で展示会に駆り出され、そこで麻里の対応をすることになった。

中元は元々営業なので、いろいろと提案はできる。そして、麻里の要求が具体的だったため、提案しやすかったらしい。そして、中元が出したプランの一つを麻里が気に入り、

「是非その方向で進めたい」

ということで、中元がその後も麻里の案件については対応することになった。

最初は仕事だけの付き合いだった。しかし、徐々に打ち解けてきて、プライベートでも飲みにいくようになり、気づけばそういう関係になっていたとのことだった。

お互いに結婚していたので、どちらも口には出さないが、お互いの家庭を壊さないという暗黙のルールがあり、お互いにそれは守っていたようだ

しかし、しばらく経ったころ麻里の態度が変わり始める。それまではどこか余裕な感じがあり、中元と『遊んでいる』という印象で、他にも男がいそうな気配があった。

それが、『あなたのことが本気で好きになった』とか、『あなたなしの人生なんて考えられない』とか、そういう類のことを言い始めた。

それは、お互いに守ってきた暗黙のルールを壊す言葉達が、中元もその言葉を聞かされ続け、徐々に本気になってしまった。


まず、ここがひっかかる。

なぜ、いきなり態度が豹変したのだ?しかも、急に。中元には悪いが、自分はしげさんの嫁、金城麻里をにあまり良い印象を持っていない。おそらく、中元が付き合い始めに抱いたイメージ、

遊んでそうで他にも男がいた。

というのが正解だろう。

しげきちのお客さんからの評判はよかった。確かに愛想はよかった。しかし、自分にはそれが作られた愛想にしか見えなかった。あまり話したことはないが、客の発言が気にくわなかったりすると、あからさまに不愉快な顔をしていた。そういう態度を客には見せないようにしていたつもりだろうが、そういうのは伝わるものだ。

いつだったか、自分がしげきちのことを『家みたいに落ち着ける店だ』と言ったとき、自分を睨んできたこともあった。一瞬のことで本人に自覚はないかもしれないが、あれがあの女の本性だと思っていた。

だからしげさんが麻里と結婚したと聞いたとき、残念な気持ちになったものだ。

それはさておき、なぜ、いきなり中元に対する態度を変えたのか。

「中元はお互いに魅かれあって、遊びが本気に変わっていったんだ」

と言ったがそれは違う。

確かにそういうこともあるかもしれないが、少なくともそういう女性は結婚後、何人も男を作ったりしないはずだ。自分の欲求のままに遊んでいる女が、

「あなたなしの人生なんて考えられない」

など、滑稽すぎて笑う気にもなれない。

では、なぜそんなことを言い出したのか?

おそらく、虜にする必要が出てきたんだろう。簡単に言えば、利用する必要が出てきた。目的はわからないが、自分の言いなりになるように、中元をコントロールする必要が出てきたんだ。

ただ、今の中元にこんなことを言っても信じないだろう。

「そんなことない。お前の妄想だ。おれたちは愛し合っている」

そう言われて終わりだろう。

確かに、自分の勝手な妄想だ。ただ、中元のことを本気で愛してるとはとても思えなかった。だから、違う聞き方をしてみた。

「麻里ちゃんに何か頼まれなかったか?」

と。

中元は答えなかったが、ひどく怯えていた。それは自分にとって、答えているようなものだった。中元はやはり麻里から何かを頼まれたのだ。そして、実行した。

おそらく、中元自信もその行動の目的は知らないんだろう。いや、知らされていたのかもしれないが、中元が聞いている内容は本当の目的ではなく、中元もそれに気づいているに違いない。

最初は、中元も疑ってなかったんだろう。もし、少しでも何か怪しいと疑っているのなら、中元はそんなことをしない。まっすぐなあいつなら、しないはずだ。だから、何かを実行した。

そして、それ自体は大したことではなかったのかもしれないが、おそらく、その後、『大したこと』が起きたのだ。聞いていた目的を疑うようなことが起きたのだ。直感だが、中元はまだ真実を知らないはずだ。

「なんで、オレに話を聞いてほしいと思ったん?」

そう聞いたとき、中元は

「大正でなんか、噂とか聞いてないかなと思って」

と答えた。

自分は、大正の飲み屋によく行っていた。ただ、東京へ移動になってからは当然だが大正には行けないし、大阪へ帰ることも滅多になかったので、そういう噂話を聞くことはかなった。

そして、飲み屋知り合った常連客とは普段から連絡を取ったりはしない。というより、連絡先を知らない人の方が多い。飲み屋で顔見知りになった常連客同士など、そんなもんだ。

だから、自分には情報がなかったのだが、中元は、そんな飲んだくれの噂話を気にしていた。

なぜか?

それは、飲んだくれの噂話に麻里が中元へ頼んだ『何か』に対する本当の目的が隠れているからではないだろうか。

中元のあの怯え方、そして、飲んだくれが噂しそうなこと。それらを考えると、1つの出来事が自然と浮かんできた。

『しげさんの死』

だ。

事故だと聞いていたが、散歩中の心臓発作だったらしい。中元が教えてくれた。

しげさんは心臓が悪くペースメーカーをしていたが、心臓に負担がかからないようなウォーキングは日課としていた。

ペースメーカーをつけとってもな、運動はした方がええらしいねん。激しい運動はアカンけどな」

しげさんからそう聞いたことがあり、印象に残っていたので覚えていた。

その日課のウォーキング中の死。

「だから、事故やねん」

中元はそう言いながらも怯えていた。確かに、しげさんの死に事件性はなく事故として処理されていた。でも、本当にそうならば中元がその話をするとき、怯える必要はない。

ウォーキング中に心臓発作が起こった。そしてそれは、実際にありえることで、しげさんについても事故として処理された。事件性はない。

それにも関わらず中元は怯えていた。その怯え方も気になった。ひっかかった。

いろいろ考えてみた。そして、1つの考えが頭をよぎった。

(しげさんの死には事件性があるのではないか?)

そう考えると辻褄が合う。

(自分のしたことが、不倫相手の亭主の死に影響したかもしれない)

中元はそう考えてるから、怯えているのではないか?

麻里に直接は聞けないのだろう。たとえ聞いても、麻里が素直に教えるとは思えない。だから、自分に何か手掛かりになりそうな話を聞こうとした。

(中元は、何をしたんだ?)

まずは、中元が気にする『噂話』が本当にあるのかどうか、あるとすればどんな話なのか確かめないといけない。

「大正~、大正です。次は、芦原橋に~」

電車が大正駅につく。

(もやもやしてすっきりしない気持ちを少しでも晴らすために、情報がいる)

田坂は駅を出て、高架沿いを歩いた。沖縄料理お店がちらほらと見えてくる。そして、しげさんと仲がよかったおばさんがやっている、その中の1軒に入っていった。

おわりに

何とか年内にキリのいいところまで書けるよう頑張りたいです!

今回も最後まで拙い文章につきあってくださりありがとうございました。

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小説シリーズ【デリートマン】⑮
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