哀愁漂う愛すべき男たち

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今回のお話

今回は、学生時代にバイトしてたカラオケ店でのお話を紹介します。当時はナンパはまだまだアナログ的な感じが主流でした。カラオケ店時代の思いで結構あります。

夜、キャッチ(ビラ配り)へ

学生時代、カラオケ店でバイトしていた。僕が働いてたお店の営業時間は昼12時〜朝5時で、僕は夜11時〜朝5時深夜の時間帯で働いていた。

小さなお店で、平日は基本的にお客さんが少なかったので、だいたい2人で回していて、その日は先輩と僕のバイトだけの日だった。

暇な日、夜の12時を過ぎると朝までフリータイムの料金を下げたりする。

その日は夜の12時を過ぎた時点でお客さんが一組だったので、フリータイムの料金を下げて店の前でキャッチ(ビラ配り)を始めた。

平日のこの時間帯にビラを取ってくれる人は、だいたい話を聞いてくれる。最初は、OLさん風の女性2名がビラを取ってくれた。二人ともキレイな方だった。

女性:「朝まで1000円なん?」

僕:「はい。朝までお一人さま1000円+ワンドリンクになります」

女性たち:「その値段やったらいいか。いこか」

みたいな感じで来てくれた。お店に案内し、先輩に対応をまかせ、またキャッチに戻る。

程なくして、僕と同じ年くらいの学生と思われる男性2名が、ビラをもらいに来た。先程と同じ説明をして、お店に案内する。

この男性達、先程の女性二人組狙いな気がした。この後、もう一、二組を案内し、キャッチ業務を終えてお店に戻った。

動きだす男たち

当時、お店でお客さんがナンパするというのはたまにあった。当時は今のようにSNSなど流行ってなかったし、そもそもスマートフォンがない時代。

今の時代はSNSなどで出会いの場が増えたので、道やお店などで声をかけるというアナログ的なナンパが減っているらしいが、当時はまだまだアナログ的なナンパが主流だった。

なので、お店で声をかけて、うまくいったときは

「すみません、あそこの部屋と一緒にしてください」

という感じで、男性のグループと女性のグループが一緒になるというケースは特に珍しいことではなかった。働いてたお店は小さいお店だったので、死角が少なく、フロントから結構廊下を見渡せた。なので、フロントから全てではないがある程度廊下の様子など確認できる。

店長がいれば、お店でのナンパ的な行為を注意することがあったが、店長も毎回注意する訳ではなく、黙認してるような部分もあった。

なので、僕もそういった行為を見ても特に注意とかしなかった。注意するどころか、うまく行きそうやな、とか、あれはアカンやろな、とか予想してた。いろいろ見てると、だいたいこの予想が当たるようになってくる。

今回のケースは、行けそうな気がしてた。あきらかに女性の方が年上に見えたけど、女性はお酒が入ってる感じだったし、声をかけて無視をするようなタイプに見えなかった。男性慣れしてる印象も受けた。男性の方も凄くチャラい感じでもなく、どちらかというとさわやかな学生という感じだった。

お店で声をかける場合、すぐに相手の部屋に入ることは少ない。だいたい男性の偵察担当が、女性の部屋の前を用事もないのに何度も通りすぎ、その際に覗くような形で、中の様子を伺うところから始まる。

僕たち深夜バイトメンバーはこの行動を「確認」と呼んでいた。

僕:「確認入りましたね。」

先輩:「間違い入りで行きそやな。」

確認後、一番多いパターンは「部屋を間違えた」と言って女性の部屋へ入るパターン。この攻め方を僕たちは「間違い入り」と呼んでいた。

しかし、今回は違った。何回かの確認の後、男性がドア越しに部屋に向かって手をふり始めた。カメラなどなかったお店なので部屋の中の様子は確認できないが、男性の反応を見る限り、女性も間違いなく部屋の中から手をふっている感じだった。その後、男性が女性の部屋に入っていった。

先輩:「合流近いな。」

僕:「ですね。」

フロントに電話かかってくるかなと思ってたけど、しばらくして、男性が直接フロントにきて「部屋を一緒にしてほしい」とお願いしにきた。

戦い始めた男たち

男性陣が女性陣の部屋に移動する形で話がまとまったみたいなので、そうしてもらった。そして、ここからドリンクなどのオーダーはすべて男性陣がもつとういうことだったので、これ以降のオーダーはすべて男性陣の伝票につける形となった。

合流して、けっこう良いペースで4人は飲み始めた。合流した時は、あまり歌わず飲みに移行することが多い。今回もその感じだった。主に僕がドリンクを運んでいたが、運んでいくうちに気付くことがあった

僕:「多分彼女たち、お酒強いですよ。」

先輩:「オレもそんな気がする。次の注文オレ持って行くわ。」

当時、僕が大学3回生、先輩は一つ上のフリーターだった。二人とも若かったけど、お酒は強い方だった。

二人とも年が近い人達には負けなかったし、年配のお酒好きな方と飲みに行っても対等に飲めた。なので、だいたい飲み方を見るとその人がお酒強いのか弱いのかわかった。

フロントの電話が鳴る。

男性:「カシスオレンジ二つと生二つ。カシオレはカシス多めで!!

凄いテンションでそう告げられる。「カシス多めで!!」とか言われたの初めてだった。カシス増やして酔わそうとしてる。。。可愛いらしい。そのことを先輩に告げると爆笑してた。

先輩:「リキュールやし、そない効果ないやろ(笑)でも多めにして作ってあげ(笑)」

「はい」と言ってほんとにカシス多めにしたカシスオレンジと生を二つずつ用意した。

僕:「○○さん、持って行きますよね?」

先輩:「うん。ちょっと行ってくるわ。」

しばらくして先輩が戻ってくる。

先輩:「あの男の子らな、多分もうあかんで。そんなに強くない。潰されるで。ほんで彼女らな、間違いなく強いで。全然変わってない。カシスオレンジとか、そんなん飲むようには見えへんわ。」

僕:「ですよねぇ。」

心配になってくる。カシス多め注文が2回くらい続いた後、フロントにかかってくる電話が女性からになった。

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敗れ去った男たち

女性:「ウイスキー水割り、二つください。」

あの男の子ら。。。

僕:「○○さん、電話が女性からになってしかも水割りになりました。ちょっと僕持っていってきます」

水割り二つを用意し、部屋まで運んだ。そこには、戦いに敗れた男たちの姿があった。二人ともソファーに崩れ落ち、完全に眠っていた。ついさっきまで、「カシス多めで!!」ってイキってたのに。。。

可哀そうになってきた。フロントに戻り先輩に報告する。

先輩:「時間の問題やったしな。彼女らまだまだ飲むと思うよ。」

僕も同感だった。そして、その注文は男性陣の伝票に計上されていく。予想通り良いペースで水割りを飲んでいく彼女たち。僕はもう勘弁してやってくれという気持ちになっていた。

男性陣が寝てから、僕が水割り持って行くときに女性たちから先輩のことをいろいろ聞かれるようになった。この先輩、凄くイケメンで、まあモテた。お互いバンドをやっていたが、同じバンドマンでも、こうも違うかというくらいモテまくってた。

先輩は女性のお客さんから連絡先もらうことも多かったし、こういうことには慣れてた。

僕:「彼女たち、○○さんお気に入りみたいですよ。」

先輩:「オレまたモテてる?じゃあ次からオレがドリンク運ぶ。」

本当にモテる人がこう言ってもまったく嫌みに聞こえないから不思議だ。この後、どんどん先輩と女性達は仲良くなっていき、いろいろ先輩が教えてくれた。

25歳のOLさんで、会社の同僚の二人であること。二人で買い物してから飲んでたら電車なくなったこと。カシスオレンジは男性が勝手に頼んでいたらしいけど、何でも飲めるからまあいいかと思ってたこと。そして、お酒は凄く好きなこと。

先輩:「たまに声かけられたりすんねんて。あの男の子たちは二十歳の学生らしいわ。めっちゃ良い子たちって言うてたよ。」

じゃあ彼ら寝た後にそんなに飲んだるなよ。。。この後も水割りを飲み、女性たちは4:30くらいに伝票を持ってフロントに来た。

女性:「5時過ぎに電車動くから先に出るわ。あの子たちによろしく言うといて」

自分でよろしく言え!!って思ったけど口には出せない。

女性:「○○くん、また連絡するな。飲みに行こな。」

先輩連絡先交換してるし。。。まあしてない訳ないか。そして、彼女たちは合流前に飲んだ分と部屋代だけ支払い帰っていった。

哀愁漂う男たち

5時になる。他のお客さん達も帰り、あの男の子達だけ。

僕:「起こしてきますね。」

先輩:「よろしく。オレ、閉める準備しとくわ。」

声をかけ、身体をゆすってもなかなか起きない。やっとの思いで起きてもらい、彼女たちが先に帰ったことなどを説明する。

そして、お会計。確か、15,000円は軽く超えてたと思う。泣きそうな顔になっていた。

男性:「そんなに飲みましたっけ?確かに飲んだけど、そんないくはずないけど」

僕:「お二人寝られた後、女性の方がけっこう飲まれたんです。」

男性:「ほんまですか?」

僕:「ほんとです。連絡して確認してもらっても良いですよ。」

男性:「連絡先、知らないんです。」

マジか。。。彼女たちのほとんどの飲み代を払わされるのに。。。連絡先交換できてないのか。。。可哀そうすぎる。今閉店準備してるウチの先輩は、寝てるあんたらの横で連絡先交換したみたいやぞ。不公平すぎる。。。

支払ってもらうの、申し訳なくなった。でも、もらわない訳にはいかない。心を鬼にして(する必要ないが)、彼女たちの分まで支払ってもらった。

帰っていく彼らの後ろ姿からは、かつて感じたことのない程の哀愁が漂っていた。

先輩:「閉めて帰ろか。」

僕:「はい。」

この人が悪い訳ではない。でも、なんとも言えないやるせなさが残った。今度あの男の子たちが来たら、何かサービスしてあげよう。先輩のイケてる背中を見ながら、そう強く思った。

おわりに

結局、僕がバイトしてる間にその男の子たちは来ませんでした。女性の方は何回か来ましたが。今では、このカラオケ店はなくなっているのですが、お店のあった近くではよく飲むので、そのとき彼らのことを思い出したりします。僕と同い年くらいだったので、今ではすっかり良いおっさんになってしまっていると思うけど、優しそうな人達だったからきっとステキな結婚をされていると思います。彼らと一緒に飲んでみたかったな。

今回も最後まで読んでくださりありがとうございました!

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